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紙の本
輝くもの天より墜ち (ハヤカワ文庫 SF)
著者 ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア (著),浅倉 久志 (訳)
翼をもつ美しい妖精のような種族が住む銀河辺境の惑星ダミエム。連邦行政官のコーリーとその夫で副行政官のキップ、医師バラムの三人は、ダミエム人を保護するため、その星に駐在して...
輝くもの天より墜ち (ハヤカワ文庫 SF)
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商品説明
翼をもつ美しい妖精のような種族が住む銀河辺境の惑星ダミエム。連邦行政官のコーリーとその夫で副行政官のキップ、医師バラムの三人は、ダミエム人を保護するため、その星に駐在していた。そこへ“殺された星”のもたらす壮麗な光を見物しようと観光客がやってくるが…オーロラのような光の到来とともに起こる思いもよらぬ事件とは?『たったひとつの冴えたやりかた』で言及されていたファン待望の物語、ついに登場。【「BOOK」データベースの商品解説】
【星雲賞 海外長編部門(第39回)】【「TRC MARC」の商品解説】
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紙の本
美しいこと。おぞましいこと。
2008/04/26 23:17
8人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:つきこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
美しいタイトルを裏切って内容は衝撃的です。
宇宙の辺縁にある惑星ダミエム。翼を持つ美しい妖精のようなダミエム人を保護する名目で、連邦から派遣された保護官が常駐するその星に一団の観光客がやってくる。観光客の目的は特異な自然現象”ザ・スター”。超新星爆発によるオーロラを思わせる現象とともに、彼らは驚くべき事件に遭遇する。
何か美しいもの。きれいなもの。
そんなものに対する無知や鈍感さが招く、おぞましい災厄を描いたこの物語、「たったひとつの冴えたやり方」でキュートな女の子に過酷な運命を選び取らせたように甘さを許しません。ユニークで魅力的なキャラで煙幕を張ろうと、本書は主人公が大人であるだけにもっと容赦がありません。
おぞましい災厄もやがて去り、美しいもの・きれいなものを蹂躙した後の世界に何を見るのか。
蛮行に立ち向かう勇気を描いたものは数あれど、蛮行の後に来るものをも予見して稀有な一冊。とても悲しいことですが、美しいもの、きれいなものを完膚なきまでに叩き潰しにかかる今の日本にあって、本書が提示する暗い示唆にうっすらと背筋が寒くなるよう。
「オーケー、グリーン」作中で何度も繰り返され、最後の最後で発せられるこの台詞。万感の思い。そんなものを鮮烈に痛切に感じさせ、圧倒されます。
紙の本
復讐と私欲
2013/06/22 18:51
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Tucker - この投稿者のレビュー一覧を見る
銀河系辺境の惑星ダミエム。
そこには、昆虫のような美しい種族と、その種族の保護監察官である3人の人間が住んでいた。
普段なら訪れる人もほとんどない惑星。
その惑星ダミエムに13人の観光客がやってくる。
近くの「殺された星」と呼ばれる、爆発した星のもたらす、壮麗な光景を見るために。
だが、その中に・・・。
裏表紙のあらすじの部分にも書いてあるが、著者の別作品「たったひとつの冴えたやりかた」の幕間劇の中で、当作品で描かれる事件についての言及がある。
言ってしまえば、ある特定の場所の中だけで起こるミステリー。
中盤までは、正直、退屈。
ただし、事件が起きてからは、怒涛の展開で、一気に読み進んでしまった。
事件は一つではなく、二つ発生する。
しかも、ほぼ同時に。
ひとつは「復讐」が、もう一つは「私欲」が目的。
「私欲」が目的の方の事件の方が、物語を引っ張るのだが、印象に残るのは「復讐」の方だった。
なぜなら、その「復讐」は筋が通らないから。
復讐者も、その事に気づいていながら、やり場のない怒りの捌け口にしてしまったのだろう。
そして、その「復讐」の結果は、ありがちな結果に終わる。
(つまらない結末、という訳ではなく)
ふと、気になるのは、この復讐劇のそもそもの原因となったモノ。
「魂を貪り食うモノ」らしいが、最後まで、はっきりとした正体は分からない。
が、こういうモノは、人それぞれ、自分の中に飼っているような気もする。
ただ、ほとんどの場合、眠ったままか、実害のないレベルで留まっているのだろうが・・・。
紙の本
戦慄のティプトリオペラ
2009/07/22 00:45
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:SlowBird - この投稿者のレビュー一覧を見る
ある銀河辺境の惑星に、20光年離れた超新星爆発の光が届く。その夢幻的な眺めを観光しようという一団の宇宙船が到着し、個性的なそしてそれぞれに謎と憂愁を秘めた人物達がタラップを降りてくる。なんともお気楽そうなオープニング。迎えるのはこの惑星の3人の銀河連邦行政官、それは昆虫的な生命から進化したこの惑星の美しい原住民が、かつて人類から受けた残虐な仕打ちを繰り返さないために派遣されている保護官でもある。さて連邦の厳しいチェックをかいくぐって、密貿易と悲劇の再現を目論むのは誰か。陰謀を打ち砕くためにいかなるアイデアとアクションが、この奇妙な世界に繰り広げられるのか、それは手に汗握るスペースオペラであり、ヒューマニズムと勇気の限界を試すような物語だ。
さてティプトリともあろう人が、そんな通俗的な設定を敢えて持ち込んだのはなぜだろうか。行政官の一人は女性で、かつて軍の組織にいて記憶抹消療法を受けた後に連邦職員となった。その夫の行政官代理は元軍人で、超人的な軍歴がある。そして二人は深く愛し合っている。かつて空軍を経てCIAに勤務し無数の機密を抱えていたティプトリ自身と、同じく大佐であったその夫の人物像が投影されているというだけではない、本作発表の2年後に71歳で人生を閉じた彼女の当時の想いについて、深く考えざるを得ない。
ティプトリはその卓越した論理性、空想力、エスプリによる作品を書いてきたのだが、本作では緻密さもリアリティもかなぐり捨てたかのように、むしろソープオペラ風展開を導入し、自分の人生でもっとも大事にしてきたこと、そして「これから」大事にしていこうとする気持ちをつぎ込んでいるのだ。ティプトリの作家活動にいたるまでのキャリアを、人生の理性側の半分とすれば、これまで隠されていたもう残りの半分がここに注がれている。主人公の独白も、二人の会話も、甘い甘いロマンス風ではあるが、その底にある余人には辿り着けないほど深い経験が積み重なって、強靭な思いに身震いを感じさせる。
そもそも超新星爆発がなぜ起きたのかの謎、その人間にもたらす影響についてはかなり度肝を抜くアイデアだし、何重にも絡まった因果関係、逆転に継ぐ大逆転の展開も読み応え十分で、しかもそれが24時間のドラマに凝縮されて緊張感に溢れているのだけど、しかしそれらのすべてが「彼女」の愛が貫かれるためのお膳立てに見えてしまう。今までティプトリ作品には常に目を見開かされてきたが、本作ではティプトリという人生そのものに打ちのめされてしまうのだ。